「黒田倫弘2004野音。終了」
終わってしまった。自分的には大成功で、ああ、これほど充実したツアーは初めてかも、と思うことが出来た「SEED
TOUR」から間をおかず。クロダ単独公演、日比谷野音。2004/10/11。
全てがあっと言う間の出来事だった。この、ほんの数分、数秒のために何日も何時間もかけて準備した、さまざまなことが次々と終わってしまうのが寂しかった。元来ライブとはそういうもので、だからこそライブなのだが。「観に来た人がこういう風に楽しんでくれればいいな」と思って創ったいろんなものが、その思い通りにきちんと伝わるだろうか、という事が開演直前まで気になってしょうがなかった。それはオープニングSEだったり、いろんな演出だったり、そしてもちろんアレンジを変えたものも変えてないものも含め全ての楽曲において。
しかし、僕はステージ上で確かな手応えを感じていた。「あ、伝わってる」と思った。もちろん、全てのお客さんが100%満足してくれた、などとは思っていない。不愉快な思いをした人や楽しくなかった人ももちろんいるだろう。でも、そのことが自分の中ではマイナス要素になることはなかった。なぜなら、クロダ、クロダバンド始めこのコンサートに関わった全ての人が全力でこのコンサートを成功させようとしていたから。
そのためにいろんな人がエネルギーを傾けて準備しているのを知っていたから。
それは確固たる自信となってステージ上のパフォーマンスに表れる。「ポエポエ」の前の、コントめいた寸劇だってそうだ。やりたい、と言ったのはクロダ自身だった。格好いい自分とそうじゃない自分。そのギャップを楽しませる自信があったのだろう。僕らは若干の不安を感じながらも「クロダについていこう」と思い作業を進めた。何時間もかけてSEを創ったりセリフを録り直したり、そしてリハーサルを重ねた。
「お笑い、は奥が深いよね。」これはいろんな人がリハーサル中に口にした言葉だ。不安は誰もが感じていたんだ。でもクロダは一度も「やめようか」とは言わなかった。絶対楽しませる。そんな熱を感じた周りのスタッフからもどんどん意見が出るようになった。そうしてみんなで創りあげたものだ。みんなにそんな自信があったから。拒否反応をおこした人もいることは容易に想像出来る。あのクロダがハゲづら、だもの。
でも、笑い声が沸き上がった時、歓声が起こった時。心の底から嬉しかった。ひとつのアートが成功した、と思った。
以下セルフライブレポでございます。
Opening SE〜「Bulldog66」
このSEは、クロダからディズニーランドっぽいヤツがいい、と発注を受け僕が創ったもの。エレクトリカルパレードで始まってホーンデッドマンションで終わる、みたいなヤツ(笑)と言われ、そんな簡単に言われてもー?!と、あわあわ言いながら何とか創りあげた。僕は去年の野音を何度も何度も思い返しながら、お祭りにふさわしい、わくわくするようなオープニングにしたい、と願って作業を進めた。そして恒例のクロダお得意のMCを入れて完成した。
SE終わりでクロダが登場してドラを叩いて、Bulldog66。僕はリハーサルの前の、構成の段階でもうわくわくしていた。そしてこれも恒例となりそうな音玉、光玉の特効。「ここで来ますから!」とスタッフから何度も聞かされていたにもかかわらず、やっぱりメンバー皆ひっくり返りそうだった。
「エモーション」「Spiral Century 」「Jump'n Dash」
もう飛ばすしかないでしょう、というメニュー。しかしSEED TOURという大きな結果を経て、機が熟した状態のクロダバンド。落ち着き払った重厚なグルーブ、それでいてクロダの熱に呼応するように熱さを増していくサウンドを創り得た、と思っています。
「Nell Flap」
ちょっと懐かしいですね。イントロのストリングスが出てくると胸がしめつけられる感じがします。
そしてちょっとしたところですが、間奏前のクロダの声が野音に響き渡って、葛Gのアコギのソロに繋がる、という場面を想定してアレンジを練り上げました。
「Decadence」
これもやはりあの会場にふさわしいオープニングにしたいな、と思いアレンジしました。
残念ながら月光は輝いていなかったけれど、それに手を伸ばすようなクロダの唄だったと思う。
「桜Odyssey 」
「 Future In Blue 」
3rdアルバム「Future In Blue 」からの楽曲群。あの世界観が再びよみがえった。バンドのサウンドもあのツアーとはひとまわりもふたまわりも違う、重厚なグルーブを醸し出していた。
「サバイバルGo Go 」
「麗しのR&Rスター」
メンバー全員が前に出てのアコースティックセット。「麗し〜」ではいつぞやのインストアイベントの時に楽屋で何となく創って、やり始めたあのバージョンがすっかり定着してしまった。
もともと人を笑わすことにも大きなこだわりを持つ関西人クロダである。そろそろ封印したいと口にしながらも曲順などで困った時はあのバージョン、となる(笑)。いつまで続くのかは誰にもわからない。
そしてクロダが言い出した、「ツイスト&シャウト」みたいなコーラスを入れたい、というシーンを挿入してのアレンジとなった。
「トカゲの陽 」
「Water Colors 」
「Daughter Beyond Ashes 」
この日の「トカゲ〜」は凄かった。やっさんの叩き出すビート、SEIちゃんのオルガンのグルーブが一体となってほんわかしていた場面を一転させる。そしてこの曲独特の張り詰めた緊張感を持ちつつも、この日のクロダはとてものびやかに唄っているように見えた。これまでの、ベストアクトだったと言える「トカゲ〜」だった。
そしてSEED TOURの流れを組むこの2曲。いわずもがな、である。2004年前期のクロダの集大成とも言えそうなシーンでした。
「出かけよう 」
「ポエポエ 」
さて、問題のコントを(笑)はさむこのシーン。バンドメンバーのみで演奏される「出かけよう」の僕の見せ場である(笑)ソロのコーナーを容赦なく寸断され(大笑)、トラブル勃発と見せかけ寸劇になだれ込む。
この辺のアイディアが誰から出たものなのかはよく知らないのだが、ここに関しては舞台監督の淳ちゃんがかなりこだわって作り込んでいた。寸劇のキャストの種明かしはここでは控えるとして(笑)、しかしその4人全員がとても光っていたと思う。それぞれがキャラクターをしっかり発揮しており「ポエポエ」本編でもがっちり盛り上げてくれていた。この辺のキャスト配置はクロリンだ。さすが、この人ならこんな動きをしてくれる、というのをしっかり見据えた上でのナイスキャスティングである。
客席に配置されたポエポエ団も少ないリハーサルの中で、最高の本番に盛り上げてくれた。いやあ、楽しかった。観に来た友人は「彼らの引き際が見事だった」と感心していた。
「憂いのR&Rスター 」
「サンディー」
「Cokescrew Coaster 」
「スリルバカンス 」
「サンディー」の間奏で見事なバク転を見せたクロダ。「ふむふむ、そこにマイクを置いて。なるほどバク転して戻って来てそこでマイクを掴めるようにするわけね。なるほどぉ、さすがだねえ、プロだねえ!」と」感心して見ていたら。間に合ってないじゃん!(爆笑)Bメロ欠けてんじゃん!・・・まあご愛嬌ってことで(笑)。
そして懐かしの 「Cokescrew Coaster 」
これもあらためて見直そう、ということで何度もリハーサルを重ね、特にSEIちゃんにはいろんな負担がかかってしまった。ちょっと初期に演っていたバージョンに近いテイストになったかな。
大盛り上がりのうちに本編も終了。去年の野音は暑さも手伝って、いわゆる音、演奏の点みたいなものが見えなくなることが多かった。しかし今年はどんなに盛り上がって熱くなっても、バンドのアンサンブルが崩れることはなかった。やっさんとコンちゃんのしっかりしたグルーブの上に僕と葛Gのギターが乗り、そしてSEIちゃんのキーボードが色彩を添えていく。そしてそれらは全てがクロダの唄を核として。
そんな確かな手応えが揺らぐことのないライブだった。
アンコール
「オレンジ 」
「Easy Bazooka 」
「Wonderful Life 」
懐かしいけど新鮮だった。「Wonderful Life 」別に何か理由があって演らなくなっていたわけではない、と思う。だからクロダがこの曲を演りたいと言った時もさして驚きはしなかった。しかし、今回のリハでこの曲を始めてやってみた時。あらためて「ああ、良い曲だな」と思った。良い歌詞だな、と思った。
たぶん楽曲としてのクオリティの高さ、とか作詞家としてのスキル、とかそういうものとは全く違うベクトルの、クロダがソロで歩き始めた時の熱、そしてそれを一生懸命応援してきてくれたファンの人たちの思い、みたいなものがこの曲には宿っている。
そしてそんな、その時その時の熱を宿した楽曲をクロダは持っている、ということにあらためて感動した。彼が一歩ずつ歩んで来たその歴史は揺るぎないもので。
そしてそれは確実に彼の成長に、今の黒田倫弘の立ち位置に確かに刻まれている。
とても素晴らしいお祭りになったと思っています。とても気持ちの良い思いをさせてもらいました。
クロダバンドの皆さん、全てのスタッフの皆さん、全てのファンの皆さん、そしてクロダくん。
どうもありがとうございました!
2004年10月13日
|